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【第7回】「学力」の経済学を読んで

 

 

こんにちは、Dr. KKです。

今回は先日読んで興味深かった書籍を深堀りしつつご紹介したいと思います。

(1)基本情報

著者の中室牧子さんは慶応義塾大学総合政策学部教授で、教育経済学を専門としています。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、コロンビア大学にてPh.Dを取得、日本銀行世界銀行で実務を経験し、2013年より現職となっています。本書は2015年発刊で、発行部数累計30万部のベストセラーとなり、数々の賞を受賞しています。

 

教育経済学という聞き慣れない分野を題材としていますが、その名の通り教育に関連する経済事象を取り扱う学問のようです。教育の費用対効果などの分析を行います。具体的には「教育投資が経済成長に対してどのような効果を持つか」「教育の費用は誰が負担すべきか」「教育における効率性の測定」などを行っているようです。

 

これから子育てを行う世代には非常に有用な書籍だと思います。特に医師など科学的根拠に基づいたアドバイスを求めがちな方々には最適な書籍と、自信をもって勧められます。

教育学者の個人的経験に基づいた意見よりも、統計を用いたアドバイスの方が僕も信用しています。

 

 

(2)要旨

本書は「著者の経験に基づく有用なご意見」などという主観的内容を極力省略し、あらゆる教育面での客観的データから現在謳われている通説の正当性を吟味しています。

経済学を専門としている著者が最も重要視しているのは、やはりデータ・因果関係・相関関係であり、あらゆる方面から出現し得る反論因子を、客観的事実の積み重ねによって一つずつ潰していくという痛快な内容構成となっています。

 

そのため、読者側が本書の内容を俯瞰的に受容できることが最も重要なポイントであって、仮に読者側が凝り固まった主観を払拭できない場合、皮肉なことに新たに学び実行に移せる内容は何も書かれていないとも言えそうです。

本書に限らず、自分に都合の悪い客観的事実を突きつけられた際にそれを受容できるかは、その人自身の器量に依存すると思います。

 

 

(3)具体例

親の年収や学歴に関係なく、学力の高い児童は家庭での読書量が多い

誤解のないように説明すると、これは「読書をさせると学力が上昇する」という逆は成り立たないということです。「学力の高い子供が本を沢山読んでいる」だけだそうです。

因みに余談ですが、「AI vs 教科書が読めない子どもたち」という書籍では、読解力が最重要能力としていますが、読解力と読書量は相関関係がなく、人間が読解力を獲得する過程は未だに解明できていないそうです。

やはり、読書をすれば賢くなる、というわけではないようです。

 

本書では、子供に対する親の関心の高さと相関しているのではないかと考えているようです。

 

子供を釣る時はアウトプットではなくインプットに対して行うのが有効

まず当然ではありますが、幼少期からの教育が生涯年収に影響する事は経済学的にも紛れもない事実とされています。

FIREに関連させると、やはり「稼ぐ力が強いほどFIREへの道が近くなる」ので、将来子供がFIREを目指すかは分かりませんが、目指せる能力を身につけさせてあげるのは親の役目かもしれません。

 

因みに余談ですが、京都大学の経済学研究所が出した論文では24~74歳までの大卒者13,059人に「学生時代に主要5科目で得意だったのは?」という質問と現在の年収を調査した結果は以下の通りとなったそうです。

1位:数学 620万円

2位:理科 608万円

3位:社会 576万円

4位:英語 519万円

5位:なし 474万円

6位:国語 437万円

研究では数学が最も重要な科目と報告されています。林修先生も「最も重要な科目は数学である」と断言されています。僕は娘に数遊びを率先して教えています。

 

本書では「テストでいい点を取ったらご褒美」よりも「勉強したらご褒美」の方が効果的であったとしています。

つまり、「結果のアウトプットへの褒美ではなく、インプットの段階で褒美を与える方が良い」ということです。

 

また、ご褒美に金銭を用いる事も悪くはないようです。褒美として手に入れたお金は無駄遣いせず、むしろ堅実かつ計画的に消費するようになるとのことです。貯蓄や家計簿といったファイナンシャルリテラシーの教育という側面も併せ持ち得るので、あまり良いイメージはありませんが、実はお金が有効なのかもしれませんね。

ただし、ご褒美を習慣化すると物的豊かさをより強く、より持続的に求めるようになるので、注意する必要があるようです。

 

子供を褒めて育ててはならない

研究によると、子供の自尊心は学力が高いといった他者に対する優越性によりもたらされるということが判明しているようです。決して「自尊心の高い子供ほど学力が高い」わけではないそうです。むしろ逆で「むやみに子供を褒めると、実力の伴わない自己愛の歪んだナルシストに育てることになる」ようです。

また褒める場合も、やはり残した結果を褒めるのではなく、努力した過程を褒めるべきとされています。

 

自主的に勉強するような子供に育てるためには、「勉強しなさい」と言うのはやはり逆効果だそうです。最も有効なのは「勉強を見たり、勉強時間を遵守させるなど、親が自分の時間を何らかの形で犠牲にするような関わり方」だそうです。

また余談になりますが、林修先生が「親からの相談で『うちの子が全く本を読まない、勉強しない』というものが多いが、親が読書や勉強をすれば、自然と子供もするようになる」と仰っていました。

 

ここでもFIREに少し関連させてお話をしますと、やはり子供の教育には体力的・精神的・時間的余裕が必要であるということです。帰宅後も子供の前で勉強していますか?子供の勉強に付き合ってあげていますか?

子供のことを本当に考えてあげるのであれば、親自身が経済的自立を果たし、子供との共有時間を増やすことが最も有効だと思います。

 

幼児期は非認知能力の教育が最重要である

2000年にノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のジェームズ・ヘックマン曰く、幼児期の教育によって身に着けたスキルは、その後の人生での学習を効率的にし、継続しやすくするそうです。

就学前に十分なスキルを獲得しておけば就学後の教育効果が大きくなるそうです。これを経済学では「教育投資の動学的補完性」と言うそうです。

forbesjapan.com

このサイトも参考にしてみて下さい。きっと役立つ情報が目白押しだと思います。

 

 

(4)感想

いかがでしたか?単に塾に通わせるなど、子供の教育を他人に一任して良い訳ではなさそうですね。

教育にお金を大量に費やすくらいなら、親がFIREして時間と労力をかけて自分で正しく教育する方がよっぽど有効な気がします