【第18回】FIRE~最速で経済的自立を実現する方法~を読んで
こんにちは、Dr. KKです。
今回はFIRE関連の書籍としては最も有名な物の一つをご紹介させて頂こうと思います。
(1)基本情報
著者であるグラント・サバティエさんは、貯金が僅か2.26ドルの状態から、たった5年で純資産125万ドル以上を貯蓄し、弱冠30歳にして経済的自立を到達しました。
現在は昔からの夢だった世界中を旅行して回っているそうです。
著者は資産運用などの不労所得の中で生活費をやりくりし、永久的に自由な生活を得てFIREを達成したのですが、著者が「会社を辞めてFIREする」と言った時、同僚や家族に
「125万ドルで一生は暮らせない」
「リタイア生活は定年退職後に楽しむものだ」
などと猛反対されたそうです。
しかし周りの予想とは裏腹に、現在も純資産は増え続けており、不労所得の中で自由に生きているそうです。
一般的にはなかなか想像できない生き方かもしれませんが、これも幸せの選択肢の一つかと思います。
それでは、著者がFIREに至るまでの過程を見ていきましょう。
(2)経済的自立の7段階
著者はまず、自分の経済状況を知る事から始めるよう推奨しています。
その場合、以下の7段階のいずれかに該当するかと思います。
① 明確化:今の経済状況をある程度理解する
② 自給自足:その日暮らし
③ 一息の余裕:余ったお金で貯金や贅沢をする
④ 安定:生活費6ヶ月分以上の貯蓄、かつ借金0
⑤ 柔軟:生活費2年分以上の投資
⑥ 経済的自立:投資収益のみで暮らせる
⑦ 潤沢な富:⑥以上に収益が増えていく
皆さんは今どこに該当しますか?
医師の中には既に⑥や⑦に該当されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
③の方も割といらっしゃるかと思います。
やはり医師は生活水準がどんどん上がってしまいがち(ライフスタイルインフレーションと言います)なので、すごく贅沢な生活をしている割に貯金は殆どないというパターンも見かけます…。
僕の資産状況を当てはめてみると、現在は④と⑤の間に位置しています。
⑤がなかなか厳しい壁だと思いますが、再来年には何とか⑤を達成できるのではないかと予想しています。
そしてFIREとは、まさに⑥を達成する事です。
こうして見ると、まだまだ遠い先の事のように感じます…。僕が達成できるのは恐らく15年くらい先になるかと思います。
しかし、サイドFIREは⑤と⑥の間に位置するので、10年あれば十分達成可能かと思います。サイドFIREは実現可能な目標です。
(3)FIREに向けた5ステップ
次に、FIREに向けて行うべき5ステップについて書かれています。
5ステップは以下の通りです。
① 目標金額設定
② 資産把握
③ 支出カット
④ 収入アップ
⑤ 投資
① 目標金額設定
まずは自分がリタイアする際の目標金額を設定しましょう。
「まずは収入アップじゃないの?」
と思われたかもしれませんが、実は4番目に位置します。
それよりも先に行うべきことが色々あるのです。
FIREにおいて最も難しいのが、リタイアするタイミングです。
「もう少し貯めたほうがいいのかな?」
「今辞めると収入がもったいない気がする」
といった自身の気持ちに悩み、リタイア時期を逸する方が多いみたいです。
その最たる原因は目標金額を曖昧にしているからです。
目安になるのは次の2点です。
・若くリタイアするほど少ない金額で良い
投資資産は複利の力で時間とともに増えていくからです。
・目標金額=年間支出(万円)×25
他の記事にも書きましたが、トリニティ スタディという研究で「4%ルール」というものが提唱されています。
インデックス投資では平均年5~7%の利回りが期待できるため、投資資産の4%を削りながら生活すれば、95%の確率で元本割れせずに30年間生活可能であるというルールです。
もし投資資産以外に何らかの副収入があればもっと早い時期にリタイアできます。ただこの副収入は、働いた分だけ手に入る収入(フロー所得と言います)ではなく、YouTubeやブログによる収益のような一度作ってしまえば自動で得られる収入(ストック所得と言います)を指しています。
そういう意味では、医師として少し働く事を前提としたサイドFIREは、本来の意味でのFIREは達成できていないとも言えます。
ただ、自己紹介の記事でも書いたように、自由な時間を手に入れつつ、安定した収入は確保し、医師としての高い社会的ステータスも維持できるサイドFIREこそ、最も医師に向いているリタイア方法だと思っているので、ここは目を瞑りましょう(笑)
② 資産把握
「預金通帳も数か月に1回しか見ない」
という方や、
「お金の管理は結構してるよ」
という方など確認頻度は色々な方がいらっしゃるかと思いますが、著者は
「できれば毎日、少なくとも週一は必須」
としています。
「そんな時間はない!」
という方もいらっしゃると思いますが、自分の資産を適当に扱っているうちは、FIREなんてまだまだ先の話になってしまいます。
将来の自分の人生を形成してくれる資産ですから、自分の子供のように大切に扱いましょう。
著者は「前日のポートフォリオ成績と支出額くらいを軽く確認する程度で良い」としています。
これであれば、毎朝の5~10分で確認できます。生活の支障になることはありません。
そういう意味ではMoney Forwardのような家計簿管理アプリの利用をお勧めします。
アプリを開いたら、簡単に資産変動を確認できます。
③ 支出カット
こちらでも「厳密な支出カットは必要ない」と著者は述べています。
著者は一貫して実現可能な資産形成の方法を列挙してくれています。
そういう意味でこの本は非常に有用だと思います。
厳密ではなくても良いので、「スイートスポット(大きな出費の部分)を知る」ということが最も重要です。
つまり、「細かい節約より先に大きなコストカットをしよう」ということです。
コスパを考えると当然なのですが、支出カットをしていくとどんどん小さな部分に目が行ってしまいがちです。
細かい所ばかりカットすると、生活水準にも影響しQOLが下がってしまいがちです。
本書で支出カットをお勧めしているのは「住居、交通、食の見直し」です。
これはつまり、「ライフスタイルインフレは絶対禁忌」ということでしょう!
医師は何かと贅沢する機会が多いので、ここが一番難しい部分かもしれません…
④ 収入アップ
実は「最終的には支出カットよりも収入アップが重要になる」と正直に述べています。
収入アップの鉄則を以下の4段階で表しています。
1. 雇用:スタート地点
2. 副業:複数収入源
3. 起業:人を雇い不労所得を得る
4. 投資:不労所得→株式、債券、不動産
医師は元々高給取りなので、あまり実感が湧かないかと思いますが、やはり被雇用者の収入には限界があります。
だからこそ収入アップの秘訣として「起業」が鉄則として挙がってきます。
起業するために「副業」で術を勉強し、副業するために「雇用」で種銭を作ることが必要ということです。
医師の方々はここはばっさりスキップしていいと思います。
勤務医の状態でそのまま投資しても、十分な金額を投資に回せると思います。
⑤ 投資
この本でもやはり投資先は「インデックス投資」をオススメしています。
投資素人の我々は、大博打せず着実に積み上げていくことを目標にしましょう。
具体的な投資先も、やはり米国株式である「S&P500」と「トータルストックマーケット」が勧められています。
次に考えるべきは「アセットアロケーション」です。
これはつまり、ポートフォリオ内の各資産の割合を調整してリスク分散する概念を指しています。
株式のみで資産形成すると、短期間に資産半減するリスクがあるため、著者はローリスク・ローリターンの商品である債券にも資産分配していくことを勧めています。
どのくらい債券として持つべきか(債券率)という疑問に関しては、
「債券率=年齢でOK」と述べています。つまり、
「30歳なら7割が株式でリスクを取ってもいいのではないか?」
「50歳なら株式と債券が半分ずつくらいがちょうどいいリスク管理」
ということです。
サイドFIREを目指している僕は、この考えには手本にしなくても良いのではないか?と考えています。
自分が働く事がすでにリスク分散になっており、そもそも週2回の勤務でも生活費を賄えるので、医師として働き続けるのであれば、投資資産は当分の間株式10割でもOKだと思っています。
当然S&P500自体がかなりリスク分散されている商品ですしね。
いよいよ資産形成した後は、「取り崩しの先延ばし」の秘訣を教えてくれています。
つまり、「元本割れのリスクを出来るだけ下げることがFIREの鉄則」ということです。
どうしても金融危機の際は年利回り4%を得られない時も出てきます。
そのための保険を前もって準備しておく必要があります。
その手段として、副業や不動産を挙げています。
やはりストック所得をオススメしていますね。
ただ、不動産に関しては十分に注意する必要があります。
投資で順調に資産形成が出来たからといって、不動産知識もないまま不動産業界にも手を出すと、必ず痛い目に遭うと思います。
新築不動産に投資するのは果たして正しいのか?
マンション個室を購入するのは果たして正しいのか?
どこかのタイミングで不動産投資についても勉強して記事にしてみようと思います。
最後に「リタイア後の目標を決めておくように」というアドバイスをしています。
FIREすることが目標になると、FIRE後に無為に人生を送ってしまう可能性があると言いたいようです。
ただ、僕は「そこまでリタイア後の目標を厳密に考える必要はないのではないか?」と思っています。
というのも「リタイアした直後は何もしない時間を持つほうが幸せなんじゃないか?」と思うからです。僕はすでにサイドFIRE後に色んな夢を考えていますが、これもある程度何もしない時期を挟んで始めようと思っています。
その時期にゆっくり「今後の人生で何をするか考えれば良い」と思います。
(4)感想
以上が本書の概要です。FIREに向けた具体的な流れを詳細に語ってくれています。
2,500円程度でこの知識を得られるのは非常に大きいと思います。
書かれているのは完全FIREですが、サイドFIREを目標にしている人にも非常に参考になると思います。
是非一度手に取ってみてください。